(99点)2016年芥川賞受賞作「コンビニ人間」を情熱的に感想・評価・レビュー。常識とは何か。

投稿日: カテゴリー: Blog(ブログ), Literature(文学), MembersOnly(会員限定), Radio(ラジオ), 芥川賞

どうもこんにちは、SenKuSya代表のKotaです。

今日は、芥川賞シリーズです。
僕が以前読んで素晴らしいと思った、2016年の芥川賞受賞作品である神田沙也加の「コンビニ人間」です。

もうこれタイトルからしてイカしてますよね。
読まずにはいられない、本屋さんでも、おおこれは!と必ず目が止まる素晴らしいタイトルだと思います。

というわけで、僕の意見を交えてこの本の紹介をしていきたいと思います。


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常識とは何か

36歳未婚女性、古倉恵子。
大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。
これまで彼氏なし。
オープン当初からスマイルマート日色駅前店で働き続け、変わりゆくメンバーを見送りながら、店長は8人目だ。
日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。
仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な「部品」にしてくれる――。
ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は「恥ずかしくないのか」とつきつけられるが……。
現代の実存を問い、正常と異常の境目がゆらぐ衝撃のリアリズム小説。


この文学作品のテーマは何かというと「常識」なんです。

主人公の古倉恵子は、共感能力が欠如した人物として描かれています。
物事を合理的に考えるので、世の中の常識のようなものが全く理解できないわけです。
一言で言えば、サイコパスに近いです。

例えば、結婚をしないといけない、コンビニでアルバイトを続けるのではなく正社員を目指すべき、といったような、世の中で当たり前だと思われているようなことの意味が分からないんです。


アインシュタインの言葉で「常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションのことを言う」というものがあります。
この文学を一言で表すと、この言葉が最も適してるんじゃないかと思います。

主人公の古倉恵子の視点を通して読者へ、「今あなたが思っている常識や世間の暗黙の了解、それって本当に合ってるの? 一回疑ってみたほうが良いんじゃない?」と投げかけていると僕は感じます。

常識とか普通であるということは、果たして自分自身の為になっているのだろうか。
それも考えずに当たり前だと思って、鵜呑みにしちゃうのって危険のことなんじゃないのか。

そんなことを思わずにはいられませんでした。
この現代社会を上手に風刺しているような文学です。


じゃあ僕自身は、普通とか常識とかについてどう思っているのか。
僕はそういったものは、補助器具のようなものだと思っています。

現在僕はシドニーで暮らしていますが、海外に行くともちろん日本の常識なんてものは一切通じないわけです。

海外の方が好きだと、言う人もいるかと思いますが、僕の個人的な意見としては、ここに来て日本人が好きだという思いがよりいっそうと強くなりました。

日本人のそういう常識とか世間体を気にするみたいな性格は、文化と言うか、ほとんどの日本人が共通で持っているものだと思っています。
そのせいでシャイになったり、他人の意見に同調したりというような事はあるわけですが、それが悪いことかというと、時と場合によりますが、そんなこともない気がします。

謙虚であり、空気を読むみたいなことは、日常の会話においては、誰も気分が悪い思いをしないようなメリットのほうがあるかと思います。
もちろん仕事の場面でも同じようではいけませんが、日本で見るビジネスマンってそれを仕事に持ち込んでないと思うんですよね。

僕の経験から話すと、渋谷で働いていた時も、六本木ヒルズで働いていた時も、仕事の時は仕事モードになり、会議で自分の意見はしっかりと発言するし、意見が衝突すればしっかりと話し合う、と言った光景が沢山ありました。

だから、まあこの性格が、仕事に悪影響を及ぼしているかというと、そういうわけではないんですね。

そして、僕が補助器具のようなものだと言った理由についてなんですが、もしも、この共通認識が欠如していたとすると、もっと皆は自分勝手にやって、メリットよりもデメリットのほうが多いと思うからです。

しかし、それはあくまで補助器具のようなものなので、その常識とか世間体を考えた上でも、ここはそれに従うよりも、自分の考えに従ったほうがいい、自分の信念を貫いたほうが良いと判断できる人は、それにとらわれる必要はないわけです。

よくLINEニュースなんかで、ホリエモンや、キングコングの西野さんなどや、そういうイケイケの人だったり、IT社長の様な人物の意見で、「常識に従わない」「自分のやりたいことをする」みたいな意見がピックアップされますが、それは一周して考えてみた結果なんですよね。
最初から思考のタガが外れているわけではなくて、むしろ常識を考えた上で、それでもこっちの方が正しいと思って実行しているわけです。
むしろ、常識に従わないといえるということは、人よりも常識を熟知しているということですから。

だから僕は、普通とか常識とかって、己が未熟なら従えばいいし、もう自分には必要ないと思ったら、そんなルールを破ってみるという考え方でいいと思います。


僕がこの本を読んで、気になった文を二つ紹介していきたいと思います。

「こちら側」と「あちら側」

そうか。叱るのは、「こちら側」の人間だと思っているからなんだ。だから何も問題は起きていないのに「あちら側」にいる姉より、問題だらけでも「こちら側」に姉がいるほうが、妹はずっと嬉しいのだ。そのほうがずっと妹にとって理解可能な、正常な世界なのだ。


人は他人の行動に対して理由を求めますが、それは共感できるものであればその方が良いです。
海外にいると自分にとっては理解できない理由だとしても、それは文化の違いか、という新たな理由で納得します。
理由が全く分からないと、人は凄く恐ろしく感じるわけです。
そのことを的確に表現してる文章だなと納得しました。


自由を獲得するために一生を捧げる

「コンビニに居続けるには『店員』になるしかないですよね。それは簡単なことです、制服を着てマニュアル通りに振る舞うこと。世界が縄文だというなら、縄文の中でもそうです。普通の人間という皮をかぶって、そのマニュアル通りに振る舞えばムラを追い出されることも、邪魔者扱いされることもない」
「何を言っているのかわからない」
「つまり、皆の中にある『普通の人間』という架空の生き物を演じるんです。あのコンビニエンスストアで、全員が『店員』という架空の生き物を演じているのと同じですよ」
「それが苦しいから、こんなに悩んでいるんだ」
「でも白羽さん、ついさっきまで迎合しようとしてたじゃないですか。やっぱりいざとなると難しいですか? そうですよね、真っ向から世界と戦い、自由を獲得するために一生を捧げる方が、多分苦しみに対して誠実なのだと思います」


この言葉は、一見さらっと読み流してしまいそうですが、自由を獲得するために一生を捧げるほうが、誠実な道だ、と筆者は言ってるんですよ。
そう考えると、世の中の多くの人って、果たして誠実な道を進めているんだろうか?
真っ向から世界と戦っているか?
とういか僕自身は一体どうなんだ?
戦えているか?

という疑問が湧き上がりました。

世間は分かりませんが、自分は今のところギリギリ戦えているかなあ、だけど、気を抜いたらすぐにでも戦わない道にそれてしまいそうだな、とか考えました。

もし、あれ?戦ってないんじゃない? と思うようなことがあれば、全てを投げ捨ててでも、元の道に戻ろうと思っています。


最後に、僕がこの作品に99点を付けて、あと1点は何なのかというと、欲を言えば、締めの部分でもう一つ何かほしかったかなと思ったからです。
しかし、これはあくまでも僕の個人的な見解で、文学としても、メッセージ性としても、面白さとしても完璧なまでに仕上がってます。
ぜひ皆さんも読んでみてください。


今日はこのへんで終わりにしたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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また、別の芥川賞の感想文も下に記載しておりますので、是非ご覧になって下さい。
それでは、また明日。


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