(90点)村上春樹「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を情熱的に感想・評価・レビュー

投稿日: カテゴリー: Blog(ブログ), Literature(文学), MembersOnly(会員限定), Radio(ラジオ), 村上春樹

どうもこんにちは、SenKuSya代表のKotaです。

今日は、村上春樹の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を紹介していきたいと思います。

村上春樹さん、日本ではよく話題に上がりますよね。
発行部数もかなり多くて、日本中の人が読んでいるかと思いきや、周りに聞いてみると、名前は知ってるけど読んだことはない、という人がかなり多い様な印象が僕の中ではあります。

そんな僕も、村上春樹の作品は読んだことが無くて、この作品を1年前に初めて読みました。

村上春樹の作品といえば、基本的に話が長いという印象ですが、この作品ももれなく長い作品です。

それでは、早速紹介していきたいと思います。


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「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」について

高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、“世界の終り”。
老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する“ハードボイルド・ワンダーランド”。
静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。



この作品は、二つの物語が同時に進行していく形で展開されます。
最初は何が起きているのか、判然としないまま進みますが、中盤ぐらいから、現実と夢との話が展開されていることに気が付きます。
文章の書かれ方としては、現実の話を一旦書くと、舞台が夢に移り、そしてまた現実に移る、といったように交互に書かれていますが、実際に物語から読み取れる時間の進行順序としては、現実の話が全て終わった後に、夢の話に移るという感じです。

この物語のあらすじを短く語るのは、難しそうなんですが、凄く省略して説明すると、夢の世界での話が肝で、現実世界の話は底までに至る過程を説明しているだけです。

そして、夢の世界での話は、心を失って生きるほうが楽だからそちらを選ぶのか、困難が待ち構えていようと心を持って生きるかということです。

この心というのは、記憶とか感情とかそういったものだと想像して下さい。

この物語で心を失くすということは、完璧になる、ということを意味しています。
それは、何故かと言うと、心を失った状態というのは、何かに思い悩むことなく、疑問もなく生きていけるからです。
逆に、心を持っている状態というのは、未完全な状態であるわけです。

そして物語の結末は、主人公は心を持った見完全な状態のまま生きていこうと決断します。

つまり、村上春樹がこの小説を通して伝えたかったメッセージっては、
思い悩んだり、迷ったりする、そんな未完全状態の自分でもいい。
むしろそっちのほうが人生は豊かになる。
だから、心を失わないで下さい。

そんな感じだと思います。


さて、それでは、ここからは僕がこの本を読んで思ったことを書いていきたいと思います。

余分な文章について

まず思ったのは、余計な文章が長いということです。

先ほど書いた僕のメッセージの部分ってのは、まるまる夢の世界での話です。
つまり、極端な話、半分の現実世界の話はまるまるカットできるわけです。

まあだけど、そこは物語としてリンクしているので、まだいいとします。
しかし、この小説では、物語の内容と何の関係もしないような文章が目立ちます。

あまりに何の関係もないので、最初はこれが伏線になっていて、後から回収するんだろうと思っていましたが、そんなことは全くありませんでした。

それを書く意味とは何なのか、緩急をつけるために書かれてあるのかもしれませんが、僕としては、全部削って突っ走ってほしかったです。


また、それと似ているんですが、お酒を飲む場面や、様々なちょっとした場面での情景描写がやたらと多いです。

これはもう村上春樹の書き方で、それを愉しみに読んでいる人もいるのかもしれませんが、僕としてはあまり好きではなかったです。


今回のような長編小説はいくつか読んだことはありますが、例えば、このブログでも書いた「タイタンの妖女」や、夏目漱石の「こころ」なんかですね。

これらの小説は確かに長いんですけど、全部読んだあとに、あの場面は無駄だったなとか、退屈だったなと思う箇所は無いんですね。

物語に必要不可欠だから、書いているという、長編小説に限らないんですが、そういう小説を僕は読みたいなと思っています。


文学作品について、人間を描くことについて

もう一つ、僕の中で引っかかったことは、これは文学作品なのかということです。
一般的には、文学作品としてカテゴライズされているかと思いますが、僕はこれは文学作品ではなく、小説だと思っています。

何故かと言うと、「夢をかなえるゾウ2」の感想でも書きましたが、文学作品というのは、物語の進行よりも、登場人物の心情に重きをおいているからです。
この作品は、登場人物の心情という面で見ると、それは皆無です。

以前、爆笑問題の太田光さんが、「村上春樹の作品は人間が描けていない」と言ってましたが、僕もこの作品を読んで確かに、と思いました。

この物語の主人公は、到底考えられないような、波瀾万丈の人生を歩んでいきます。
この物語はSFチックなので、それは一向にかまわないんですが、この主人公は何が起きても全く動じないんですね。
たとえ、家の中に泥棒が急に入ってきて、拷問をされたとしてもです。

また、この作品は、最後のメッセージとして心があるかどうか、ということを投げかけているわりに、この物語の主人公からは、リアルな人間らしさが全く感じられないということを僕は思いました。
だから、主人公や登場人物に、何か共感してしまうというようなことは、僕はありませんでした。

そして、セリフが翻訳チックなんですね。

リアルな生活で、絶対にこんな会話の仕方しないだろうというような感じです。

だから、まとめると、悪い意味でクールな人間になってしまっているような感じです。


批判的なことを幾つか書きましたが、それでも僕がこの作品に90点をつけたのは、物語としての面白さがあるからなんですね。

物語の設定から面白いなと思ったんですが、実際に読んでみると、中盤辺りからどんどん引き込まれていきます。

だから、僕としては、小説よりも、アニメや実写で実際に映像化したほうが、読者も楽しめるし、長編物語を読むという敷居も格段に低くなり、登場人物のクールさも目立たなくなるような気がします。


ということで、僕の初めての村上春樹作品の感想はこのぐらいで終わりにしたいと思います。

聞くところによると、初期の作品はかなり面白いということなので、時間がある時にまた読んで、ここに感想を書いていきたいと思います。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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それでは、また明日。


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